京急、カジノに意欲 山下ふ頭など想定 横浜市は積極的
[東京新聞 2014年9月14日]
カジノ合法化法案「統合型リゾート推進法案(カジノ法案)」の成立を見込み、京急電鉄(本社・東京都港区)が、カジノを中心にホテルやショッピングセンターなどを併設した統合型リゾート(IR)の運営を目指すと表明した。自社のホテルがある東京・お台場と、横浜市が再開発予定の山下ふ頭を念頭に置く。東京都は慎重姿勢で、意欲的な横浜が有力候補になりうる状況。ただ、誘致が具体化するにつれ、反対する市民らの懸念も高まっている。 (小沢慧一、原昌志)
「地域の発展を目指したIR施設運営の検討・推進」-。
京急電鉄は先月十六日、IR参入に向け専門部署を立ち上げた。複数の企業連合での事業参加を考え、不動産業者や商社などと調整を開始。海外でのカジノ運営のノウハウ収集も進めている。
開業目標は二〇二〇年の東京五輪の前。五千億円規模の投資となる。羽田空港に直接乗り入れる路線を持つ強みを生かし、横浜への設置が決まれば、羽田空港や横浜駅からの直行バス運行を検討。訪日外国人の取り込みを狙う。
京急の担当者は「五輪後も日本にまた来たいと思ってもらえるようなIRを目指す。日本の魅力をここだけで包括的に感じられる施設になるようオールジャパンで挑む」と意気込む。
カジノ法案では、立地場所は自治体が決めて申請する。横浜市の林文子市長は「IRは臨海部の再生に有効な手段」と誘致に意欲を見せ、本年度予算で調査費一千万円を計上。プロジェクトチームをつくって情報収集や検討を始めている。
候補地は山下ふ頭と明言しないものの、同ふ頭の再開発で「大規模集客施設の導入」を目指すと位置付ける。十一日の定例記者会見で、京急の名乗りに「本当にやるなら民の力でやってもらわなければならない。意欲があることはいいことだと思う」と話した。
一方、東京都は石原慎太郎、猪瀬直樹知事時代は積極的だったが、現在の舛添要一知事は記者会見などで「優先課題ではない」と述べ、慎重姿勢をみせている。
首都圏ではほかに、千葉県成田市と千葉市幕張で誘致活動がある。浜銀総合研究所の新滝健一主任研究員(50)は「横浜は他都県と比べても広大な土地が確保でき、羽田からのアクセスもいい。国際観光都市としても実績がある。カジノ誘致場所としては適切」とみている。
◆市民団体、反対連絡会を結成
カジノ誘致の動きに、横浜市内で十日、市内の市民団体などが「カジノ誘致反対横浜連絡会」を結成した。全国的には、自治体がカジノ誘致に積極的な沖縄、大阪、熱海(静岡県)、小樽(北海道)などで反対する団体ができているという。日本弁護士連合会も五月、国にカジノ法案の廃案を求める意見書を提出している。
横浜の結成集会で講演した精神科医の野末浩之医師は、厚生労働省研究班の「国内でギャンブル依存症の疑いがある人は約五百三十六万人」との推計を紹介。「既に世界で突出して多い。依存症の人からDV被害を受けた配偶者の相談も多く、ギャンブル依存は家庭崩壊につながる」と、危険性を指摘した。
法的な論点もある。競馬や競輪などは「公設・公営」のため、刑法で禁じる「賭博」ではないとされてきた。民間が運営するIRを、どう位置付けるかは難題との見方がある。
弁護士らでつくる「全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会」事務局長の吉田哲也弁護士は「カジノ法案が成立したら、まじめに働くことの尊さや、賭博による犯罪誘発の防止という刑法の理念が、ないがしろにされることは間違いない」と話す。
ソース:http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20140914/CK2014091402000119.html