「安全安心の徹底を」 コナミゲーミング会長に聞く
2014/8/15 23:46日本経済新聞 電子版
コナミのカジノ事業を統括するコナミゲーミングの坂本哲会長は20年以上の業界経験を持つカジノのプロ。カジノ事業の立ち上げから参画し、米国やオーストラリアなど世界中のカジノ施設にスロットマシンを売り込む。坂本会長に議論が進む日本版カジノのポイントについて聞いた。
――秋の臨時国会でカジノ法案が成立する可能性が出てきました。
「本当に日本でカジノを作るなら、決して不正のない公平で公正、かつ防犯対策などにも配慮した、アジアで一番安全安心なカジノをめざすべきだ。安倍晋三首相が視察するなどシンガポールを手本にしようという動きがあるが、ネバダ州の管理委員会が徹底した規制を敷くラスベガスの実績を参考にすべきではないか」
「米国やオーストラリアの管理委員会や米サンズなどのカジノ運営事業者は危険人物などのブラックリストを持っていて、健全なカジノ作りに生かしている。日本企業にもカジノ運営に参入しようとする動きがあるが、ラスベガスなどでの運営経験がない企業が日本版カジノを取り仕切るのは難しい。日本企業が主導権を持ってカジノ運営に取り組むのは将来の話だと思っている」
――ネバダ州でライセンスを取得するにはどのような審査を受けるのですか。
「管理委員会には専門調査官が約500人いる。この調査官から役員や経営幹部の経歴、犯罪歴、資産目録などをチェックされる。カジノ事業の計画に加え、過去の倒産歴も調べられる。永続的にカジノ産業に貢献できる会社や人材かどうかを判断するためだ。調査官の審査を通過すると、最後に公聴会で公開審査を受けることになる」
「ライセンスを取得した後も厳しく目を光らせるのがネバダ流だ。スロットマシンの開発では、スロットを制御する乱数表を見て適正な確率で当たりが出るかなども確認する。確率を操作するなどの違法行為を防ぐため、制御システムは社内でも機密扱いにしている。機器開発とは別に、設置したマシンをメンテナンスしたり、カジノシステムを手がけたりするためには別のライセンスを取得しなければならない」
「こうした厳しい参入規制を敷き、マフィアの関連組織や薬物履歴のある人物が入り込むのを防いでいる。最近もある上場企業から参入方法を相談されたが、一朝一夕で参入できる市場ではない」
――日本版カジノでは賭博依存症の懸念も強いです。
「依存症対策を徹底するため、実行力ある仕組みを構築しなければいけない。賭博依存症はパチンコ絡みでも言われるテーマだが、機能しているとは言い難い。それではダメだ」
「ラスベガスでは父親など家族に賭博依存症の可能性がある場合に連絡するホットラインがある。家族からの連絡があると、カジノ運営者に通達が出され、本人のカジノ利用を強制的にできなくする仕組みがある。コナミでも利用者ごとに賭け金の金額やプレー時間を制限できるスロットマシンを開発し、導入を進めている」
――日本でもカジノを巡る議論が盛り上がってきました。
「日本はもっとカジノを知るべきだ。カジノはカジノ場を中核に、ホテルや商業施設、劇場、会議場などを含む巨大な複合施設。日本ではカジノばかりに注目が集まりがちだが、全体で安全で安心な魅力ある統合型リゾートを建設する視点が大切だ」
「一口に『カジノ』と言っても、ラスベガスか、マカオかによってまったく違う。マカオのカジノは中国の富豪が集まり一獲千金を狙う賭博場だが、ラスベガスは家族連れでも楽しめるエンターテインメント。日本が目指すべきはエンターテインメントのカジノだ」
(聞き手は新田祐司)
ソース:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ15HBD_V10C14A8I00000/