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日本のカジノは、最大2.2兆円産業になる

東洋経済オンラインで「IRで始まるツーリズム革命 カジノが日本にやってくる!」というタイトルで、連載の特集を組んでいます。今回は第8回目。

 

日本のカジノは、最大2.2兆円産業になる

カジノは圧倒的な競争力を持つギャンブル

小池 隆由:キャピタル&イノベーション代表取締役
[東洋経済オンライン 2014年08月20日]

(写真:アフロ)

ゲームとは一定のルールの下で、目的の達成(勝敗やスコアなど)を楽しむ遊びです。世界には無数のゲームがあります。ゲームの面白さの構成要素には①「演出」=視覚や聴覚の表現やストーリー性など、②「技術スキル」=スキルがゲームの結果(勝敗やスコアなど)を大きく影響する、③「射幸性」=偶然性(運)が結果を左右する――などがあります。さまざまなゲームの面白さは、これら3つの要素の組み合わせで成り立っています。

3つの構成要素のうち、「演出」は時間とともにプレーヤーに「飽き」が生じます。演出を重視するゲームにはコンピュータゲームやパチンコなどがありますが、それらの個別タイトルの商品寿命は数カ月から1年と短命です。一方、「技術スキル」を重視するゲーム、たとえば将棋や囲碁などは、ルールやスキルの習得のハードルが高く、また、同レベルのスキルを持つプレーヤー同士でなければ十分に楽しめません。

このため、技術スキルを重視するゲームでは、アクティブな参加人口が拡大しにくい性格があります。一方、「射幸性」は「偶然の要素により、利益を願う気持ち」であり、人間の本能に根付いた欲求です。射幸性にはプレーヤーの「飽き」が生じず、「万人」にアピールします。

日本の既存ギャンブル市場は5兆円以上

ギャンブル、賭博とは、3つの構成要素のうち、射幸性のウエートが高いゲーム種です。表は日本の既存ギャンブル市場、カジノ市場予想、GDP対比です。

日本における既存ギャンブルには、パチンコ(法律上は遊技の位置づけであり、賭博ではない)、公営競技(中央競馬、地方競馬、モーターボート、競輪、オートレース)、宝くじ、TOTOがあります。表におけるDROPとは顧客の現金投入額、GGRとはグロスゲーミングレベニュー、事業者取り分を表します。GGRはギャンブル市場、事業者の売上高の尺度です。既存ギャンブル市場(2013年実績)は約5.3兆円です。

一方、当社(キャピタル&イノベーション)では2020年以降のカジノ市場を1.2兆~2.2兆円と予想しています。IR、カジノ施設数が3~4カ所の場合が1.2兆円、10カ所の場合が2.2兆円です。施設数はIR議連の考え方にのっとっています。この市場予想の背景は、最後に詳しく説明します。

カジノが他のギャンブルと違う理由

ギャンブルは、酒、タバコなどと同様に、人間の本能を刺激するサービスであり、どの国においても法規制の対象となっています。日本における既存ギャンブルでもパチンコを除けば、すべて主催者は自治体、または国が管理する法人です。

しかし、カジノ事業については、民間の所有、運営を実現する法制度が整備される方向です(民設民営)。カジノを含む統合リゾートの最も重要な目的は、日本、地域の魅力を世界に発信し、クールジャパン、ビジットジャパン戦略に貢献するプラットフォームの整備です。この目的を最大化するために民間の活力を導入する方針です。

ギャンブルは社会的な負の側面を持ちます。①勤労意欲の減退、②依存症、③反社会勢力の関与――などです。ギャンブルを合法化する場合、こうした社会的な負の側面を十分にケアし、最小化する仕組みが不可欠です。

また、ギャンブル事業は人間の本能を刺激するため、必然的に高い収益力を持ちます。国民の金融資産の一部の移転を受ける事業です。それだけに、運営事業者には高い公共性が求められ、収益を社会に貢献するように適切に運用する義務があります。

特に、カジノはギャンブルの中でも特別に射幸性、収益力が高い事業です。カジノを含む統合リゾート(IR)はその設置区域の範囲内だけではなく、市町村、都道府県レベルの広域連携、連動が求められます。カジノ事業者には強い地域社会へのコミットメント、信頼関係が求められます。

カジノの競争力は圧倒的

ギャンブルの中でもカジノの競争力は高いです。多くの国でカジノはギャンブル市場の中でも主役級の存在感を持っています。また、新たにカジノを合法化した国では、戦略的に産業として育成した結果、カジノが急速に大きな市場を形成する傾向があります。

ほかのギャンブルとカジノを比較した最大の特徴は、前述の3つの構成要素のうち、射幸性の比重が極端に高いことです。パチンコ、公営競技、TOTOでは、ストーリー性、視聴覚表現、データの分析など演出や技術スキルが強調されます。一方、カジノでは過剰な演出は好まれませんし、また、技術スキルの介入余地は限定的です。ゆえに、カジノのゲームの多くはシンプルです。カジノは射幸性の高さゆえ、「飽き」がなく、「万人」にアピールします。

カジノの競争力の高さの背景を整理すると、①射幸性の高さ、②控除率の低さ、③複合施設効果による集客力――です。控除率とはゲーム1回ごとの「運営者取り分/賭け金」です。控除率は、公営競技が20~30%、宝くじやTOTOが50~55%に対し、カジノは1ケタ%(3%など)です。控除率が低いほど、プレーヤーから見れば、魅力的なゲームとなります。

カジノはハウス対プレーヤーの自然確率に基づく勝負であり、運営者は大量のプレーヤーを引き付け、十分なゲーム数を確保することで、自らの勝ち額を総賭け額に対して理論的な控除率を乗じた数値に収束させます(大数の法則)。ちなみに、公営競技は運営者が総賭け金から自らの取り分を先にトップオフし、残りを参加者に分配します(パリミューチュエル方式)。

日本のカジノ市場予想は?

一方、複合施設効果とはカジノの収益力を施設の集客力にフィードバックする仕組みです。カジノ事業者はカジノの収益力を背景に、カジノ以外の多様なエンターテインメント、アトラクション、ホスピタリティ、MICEに対して多額な投資を行い、集客力を高めます。事業者はノンゲーミング施設を集客エンジン、カジノを収益エンジンと位置づけます。

日本は施設10カ所の場合、2.2兆円規模に

日本の既存ギャンブル市場(2013年実績)は約5.3兆円、GDP対比は1.1%です。当社のカジノ市場予想(2020年以降)は1.2兆~2.2兆円、GDP対比0.25~0.45%です。IR、カジノ施設数が3~4カ所の場合には1.2兆円、10カ所の場合が2.2兆円です。既存ギャンブル市場とカジノ市場予想の合計、すなわち総ギャンブル市場は6.5兆~7.5兆円、GDP対比1.35~1.55%になります。

この合計は既存ギャンブル市場からカジノ市場へのシフトを考慮しない単純合計です。カジノは既存ギャンブル市場を獲得しつつ、新しい市場を開拓する見通しであり、実際の総ギャンブル市場は単純合計よりもシフト分だけ小さくなります。

総ギャンブル市場のGDP対比はさまざまな影響を受けますが、重要な決定要素はギャンブルの「品ぞろえ」、「アクセスの容易さ」です。ちなみに、アジアの先進国で品ぞろえ、アクセスの容易さが高い国はオーストラリア、韓国などですが、それらの総ギャンブル市場のGDP対比は1.3~1.5%です。

カジノ市場出現後の日本のギャンブルの品ぞろえ、アクセスの容易さは高いレベルとなります。既存ギャンブルでは、パチンコが約1.2万店、公営競技は101カ所あり、宝くじ、TOTOのアクセスも容易です。そこに競争力が高いIR、カジノが加われば、品ぞろえも高いレベルとなります。カジノ出現後の総ギャンブル市場のGDP対比を、既存ギャンブル市場からカジノ市場へのシフト分を控除する前で、1.35~1.55%と予想することは合理的と考えられます。

日本、世界のカジノゲーミング市場規模と、それらのGDP対比、個人富裕層のネット金融資産の対比をみると、日本のカジノ市場予想(1.2兆~2.2兆円)のGDP対比は0.25~0.45%、個人富裕層のネット金融資産の対比は0.3~0.5%となります。こうした数値は、他の先進国と比較しても合理的な範囲内といえます。

ソース:http://toyokeizai.net/articles/-/45779