カジノを含む統合リゾート(IR)の実現に向けた動きが本格化してきました。6月18日には「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(IR推進法案)が衆議院で審議入りしたのです。
IRを実現するためには、現在は刑法で禁じられているカジノの運営を厳格な条件の下で許可し、カジノの利益を日本の成長戦略や社会の課題解決に最大限役立てる仕組み作りが不可欠です。IR推進法の成立は、この仕組み作りの第一歩です。本年の通常国会の会期末は6月22日であり、時間が限られていたことから、法案は成立こそしませんでした。しかし、IR推進法案は継続審議の扱いとなり、秋の臨時国会において優先的に議論されることになります。
一方、24日に政府が閣議決定した成長戦略「日本再興戦略」(改訂2014)にもIR実現のための議論を進める旨が記載されました。同じ24日には安倍首相がメディアのインタビューに対し、次の臨時国会でIR推進法の成立を目指す方針を明らかにしました。秋の臨時国会におけるIR推進法の成立は確実視されています。
IR推進法の成立は、政府、自治体、事業者の取り組みを正式に始動させるスイッチの役割です。このスイッチがオンとなった直後から、IRがオープンするまでの一連のプロセスが一気に動き出します。政府やIR議員連盟などの関係者は、2020年の東京五輪の開催までに複数のIRをオープンする意向を共有しています。
カジノを活用し、単独での事業化が難しい施設を運営
カジノを含む統合リゾートは、英語ではIntegrated Resorts(IR)と表記されます。IRはカジノのみならず、ホテル、劇場、パーク、ミュージアム、MICE施設などを一つの区域に含む統合施設です。
このMICEとは企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会、イベント(Exhibition/Event)の頭文字をとったものです。
IR施設全体のうち、カジノ部分は面積では5%未満に過ぎませんが、売上高では80%以上を稼ぎ出します。IRの収益メカニズムは、施設全体が集客し、カジノ部分が集中的に収益化、マネタイズする仕組みです。逆に言えば、カジノという強力な収益装置が存在するために、カジノ以外の施設(面積では95%以上)は、収支を必要以上に気にすることなく、十分にコストをかけて、最高のサービスの開発し、集客を拡大することだけに専念できます。