特定非営利活動法人
イーストベガス推進協議会

IRと観光資源の連動で地域振興を 大阪商業大学・美原融教授

IRと観光資源の連動で地域振興を 大阪商業大学・美原融教授

[2016.12.28 18:04 THE PAGE大阪]

 

 カジノを含む統合型リゾート(IR)推進法が26日に施行され、カジノ合法化への道筋が開けた。国はIR実施法案作りを進めるが、IRによる地域振興や雇用創出への期待が高まる半面、ギャンブル既存症問題の深刻化などを懸念する声が少なくない。IR研究とギャンブル依存症対策に携わる二人の有識者に話を聞いた。一人目は、大阪商業大学の美原融教授。同大学のアミューズメント産業研究所の所長を務めながら、IR推進の観点から調査研究に取り組んできた。

労働集約型産業のIRで数万人の雇用が生まれる

──改めてIRとは。

「コンベンション、ホテル、ショッピング、レストランに、カジノやエンターテイメントなどの要素を加えた複合観光施設を、一体的に整備する考え方だ。民間事業者が税を使わずに人が集まるラグジュアリーな施設を建設して運営する。にぎわいを作り出すことで、地域振興や雇用拡大を実現し、内外観光客の来訪を促す」

──どの程度の雇用創出につながるのか。

「数千億円規模の投資で世界有数のIRが建設されると、大きな雇用が生まれる。コンベンション、ホテル、カジノなどは、いずれも労働集約型産業だ。教育された人材による充実したサービスの提供が欠かせない。24時間無休のカジノでは、ディーラーも3交代、4交代の勤務体系で臨む。IR全体で数万人の雇用創出につながる可能性が高い」

──IRの経済効果はIR内に限定され、周囲に還元されないのではないか。

「IR利用者はIRに閉じこもっているわけではない。国際的なコンベンションが開催された場合、万単位の人がIRへやってくる。会期が1週間なら、ずっとIR内のレストランで食事を取り続けるとは、考えにくい。大阪のIRであれば、大阪が食文化の町であることは知られているだろうから、食事を楽しみに町へ出掛けようということになる」

「ビジネスで来日していても、ちょっと息抜きをしたい。大阪から京都や奈良、神戸へ足を伸ばし、海外で人気の姫路城も日帰りが可能だ。回遊性の高い地域の観光資源とIRをリンクさせることができれば、IR効果は地域全体に行き渡る。新たなIRと既存の地域資源を上手に連動させる知恵を絞りたいものだ」

カジノ合法化の前にギャンブル依存対策基本法を制定か

──ギャンブル依存症問題が懸念されているが。

「IRが誕生するまで数年かかる半面、ギャンブル依存は今すぐ取り組むべき課題だ。IR法制とは切り離して、ギャンブル依存対策基本法といった法律を別途作り、早期に対応する方向へ向かうのではないか。パチンコや競馬などを含めて、これまでギャンブル依存が表立って議論されることは少なかったが、新しい法律で依存症への国民の関心が高まることはいいことだ」

──カジノ合法化で新たな依存症を生み出すのでは。

「依存症の人にはギャンブル会場に入れない、ギャンブルをさせない、お金を貸さないなどの措置が有効だが、これまではなされたことがなかった。カジノは入場規制を導入できる。依存症の当事者や家族が入れないでくださいと申請したり、医師があなたはやめさないと判断した場合、顔認証システムでチェックすれば、入場できない」

「ギャンブルによって依存症のリスクが異なることを、総合的に研究して対策を講ずるべきだ。医療機関などが依存症の人をもっと受け入れやすい環境を整え、社会全体でケアする仕組みが求められる。先の国会審議ではIR事業者が納める交付金の一部を、依存症対策に充当すべきではないかという主張があった。今後の検討課題だろう」

──昨春開設された大阪商業大学大学院のIRマネジメントコースの現況は。

「学生はキャリアアップを目指す専門職や、IRの新しいビジネスチャンスに挑戦したい起業志望者など、さまざま。アメリカの大学の協力を得て、ラスベガスのIRで研修を実施した。カジノやコンベンションホールなどがどのように運営されているのかを、学生たちは現場で視察することができた。日本型IRのマネジメントを担える人材を、少数精鋭でしっかり育てていきたい」
(文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)

■美原融(みはら・とおる)1950年生まれ、一橋大学経済学部卒業。三井物産、同戦略研究所勤務を経て、現職。主な著書に「日本版カジノ」(共著・東洋経済新報社)、「カジノ導入をめぐる諸問題」(同・大阪商業大学アミューズメント産業研究所)など。2015年春開設された同大大学院のIRマネジメントコースでも指導。

ソース:https://thepage.jp/osaka/detail/20161228-00000016-wordleaf