特定非営利活動法人
イーストベガス推進協議会

『秋田にラスベガスを作る』 -ノンフィクション・イーストベガスの軌跡-

第2章「現実」 3.フラストレーション 

幼い頃に家の近所で最初の友達を見つけて以来、長谷川敦にとって友達とはずっと増え続けていくものだった。 母親に手を引かれて保育園に入園すると、そこには見知らぬ子供たちがいた。最初こそとまどいを感じたものの、すぐにその子たちと一緒に遊ぶようになった。川添小学校に入学した時も同じ歳の少年、少女たちとの出会…

第2章「現実」 2.あゆかわのぼるの講演

その日の夕方、誘われた講演会に参加するため長谷川敦は自宅を出た。もう3月というのに周りは雪景色であり、すでに暗くなりかかっていた。それでも真冬の頃に比べると夕暮れの時刻は明らかに後ろにずれ、日を追う毎に昼が長くなっていて、北国・秋田にも春が近づいているのが感じられた。 長谷川の目的地は農村環境改善セ…

第2章「現実」 1.郷里

長谷川敦は、アメリカ旅行から帰国していた。 ラスベガスからサンフランシスコを経て成田空港に到着し、東京でさらに数日を過ごした後、自宅に戻ったのは昨日の事だ。 長谷川が両親、妹と住む自宅は秋田県の河辺郡雄和町(かわべぐん、ゆうわまち)にあった。山形県に隣接する雄勝町に源を発し、秋田県内陸南部の穀倉地帯…

第1章「邂逅」 6.夜のストリップ

初めてのカジノ体験を終えてホテルを出ると、空はもう暗くなっていた。長谷川たちは来た道をインペリアル・パレスに向かって戻り始めた。昼間のストリップは青空の下で明るさに満ちていたが、夜のストリップは一層華やかな気配がいっぱいだった。各ホテルは色鮮やかなイルミネーションによってライトアップされ、暗闇を背景…

第1章「邂逅」 5.カジノ

長谷川たちは様々なホテルの外観を見て歩くだけでなく、各ホテルの中にも入ってみた。どのホテルでも、エントランスを入ってまずあるのがカジノエリアだ。フロントでチェックインするにも、宿泊している部屋に行くにも、またホテル外に出るにもカジノエリアを通らなければ行けないような仕組みになっている。客をカジノエリ…

第1章「邂逅」 4.ホテル

長谷川たちは、エスカレーターの付いたフォーコーナーの歩道橋を渡って、さらにストリップを南に向かった。歩道橋を降りた一角では大規模な工事が行われていた。重機が動き回り、巨大なビルを建設中だった。見渡すとストリップのそこかしこで他にも建設工事が進められており、幾つかの新しいホテルが作られていると推測でき…

第1章「邂逅」 3.ショッピングモール

長谷川はジーンズにTシャツという出で立ちで、その上にジージャンを着ていた。今は2月だから季節で言うと冬になるのに、その格好でも寒さは感じない。行き交う人々には、いろいろな人種がいて、いろいろな服装をまとっている。白人、黒人、アジア人。長谷川は向こうから歩いて来るアメリカ人夫婦らしいカップルを見て目を…

第1章「邂逅」 2.卒業旅行

日本を発ち、生まれて初めての海外、アメリカ西海岸の土を踏んだ長谷川と友人は、まずロサンゼルスに滞在し、ハリウッドやサンタモニカなどの観光地を巡った。その地で1週間過ごした後、空路を経てマッカラン空港からラスベガスに入った。昼頃のことだった。空港からホテルまでは、旅行代理店が手配した日本人ガイドがタク…

第1章「邂逅」 1.都市

長谷川敦(はせがわあつし)はその街の魅力に呑まれていた。 彼は友人と二人、「ストリップ」と呼ばれる大通りを歩いていた。傍らの広い車道には、多くの自動車が行き交っている。その中には開催中のショーをPRする宣伝カーやイエローキャブとして知られる黄色い車体のタクシーも走っていた。普通の乗用車3台分もの長さ…